突貫工事。
『お客さん、毛量多いから梳(す)いておきますね』
どうも! ススキノの父です。
妄想ではなく昔、確かにワタクシの毛量は多かった。
青年期は将来的に時が来れば白髪にはなるのは致し方なしですが、ハゲるなんて微塵も思っておりませんでした。
とはいえ、
父が30半ばで頭頂部が不毛の地と化し、毎朝鏡の前で悪戦苦闘している姿を見る度に一抹の不安を覚えてはいたのですが、二十歳そこそこのワタクシは打って変わってフサフサでしたので、まぁ大丈夫でしょうと思っていたのですが……
甘かった。
例えるならシロップ増し増しのキャラメルマキアートくらい甘かった。
遺伝とは恐ろしいもので20代半ばの頃です。
とある日、おでこが何となく広くなっていると感じました。
これはまマズい。
当時、実家暮らしのワタクシは家族にバレないように、こっそりと育毛剤を買って髪の毛という作物が育たなくなった農地へ必死に栄養を与えておったわけですが
効 果 無 し。
必死に抵抗するワタクシを嘲笑(あざわら)うが如く、無情にも頭皮の砂漠化は進んでゆきます。
更に悪い連鎖は続くもので『ここだけは不毛の地にしたらアカン!』と言われる頭頂部も呼応するように、芽が出ても痩せ細った作物しか育たなくなってしまいました。
ハゲは隠したい、とはいえ側面部から寄せるようなことはしたくない。
幸い、
自身、その時は既にススキノという髪の毛に関しては比較的緩い土地と、肉体労働に従事する仕事をしていたため、自身が選んだ道が
坊主。
髪の毛全体を1mmに刈り込み頭皮を出してしまうことでハゲを目立たなくしてしまおうと。
とはいえ、あくまで目立たなくなるというだけで根本的な解決には至っていない。
日々進む、頭頂部とおでこを結ぶ突貫工事に絶望を抱いておりましたが40歳を過ぎても完工には至っておりませんでした。
が!
ここで頭髪の悩み関し、ワタクシの人生で転機が訪れました。
とはいえ、本来なら避け続けられるなら避け続けたい、そのことに備えた保険もあるくらいなので、誰しもが思っているのですが自身に訪れたのが
癌。
治療の一環で必ず訪れるのが副作用として頭髪が抜け落ちるということ。
自身も例に漏れずでした。
とはいえ、早期発見だったので担当医師の口ぶりから
まぁ、大丈夫でしょ。
的な感じだったので、自身ものんびり治療を続けているうちに癌細胞は綺麗さっぱり消え、現在は経過観察に至っておりますよ。
と、
抗がん剤の副作用である頭皮の脱毛について、同じような境遇になった人の話を聞いていると、全員では無いと思うのですが頭がツルツルになることは無いんじゃないかと思います。
ワタクシの場合も
まだらに抜けました。
これはさすがに……と、残った髪の毛にカミソリを当てると抗がん剤の影響なのか、何の抵抗もなくスルスルと剃れるんですよね。
こりゃ面白い! と、夢中になっているうちワタクシの頭は見事に
スキンヘッドになりました。
そんな生活が半年ほど続き、頭に髪の毛が無い生活に慣れてくるとハゲに悩まなくなるようになるんですね。
そもそも悩みの種だった髪の毛自体が綺麗さっぱり
無いんですから。
持っていないものに悩みって持たなくなるんですよね。
時は流れ、今では抗がん剤の影響が無くなり、不毛の地であった頭皮に頑張って生えようとする頭髪がありますが、芽吹いたら速攻
刈り取ってやります。
今では電動カミソリが大活躍してくれるため、現在もスキンヘッドを保っております。
たまにツッコまれることはありますが、その時は返す刃で
『薬の副作用で……』
なぁんて言えば、それ以上は深堀りされることはありませんし、ウソはついておりませんしね。
まぁ、ワタクシが個人事業主であるということもあるのですが、薄毛やハゲに悩んでいる方は自分を取り巻く環境が許してくれるのならば、いっそのこと
剃ってしまう。
ということも選択肢に入れてみると幸せになれるかもしれませんね。